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番外編 マル暴の男
「オヤジ、お取込み中の所すみません。伊澤という男がオヤジに会いに来てますが………」
子供達を起こさないように小声で話す颯人さんの声が襖の向こうから聞こえてきた。
「そうか、分かった。広間で待たせておけ。すぐにいく」
伊澤という名前を耳にした途端彼の表情が一変した。
ううん、彼だけじゃない。
紗智さんもその名前にぴくっと反応し慌てて飛び起きた。
「心配すんな紗智。お前は未知の大事な息子だ。俺にとっても大事な弟分だ。何があっても絶対にお前を守る」
むくっと体を起こし、素早く着替えを始めた。
「遥琉さん………」僕も飛び起きて彼の腕にしがみついた。
「未知も心配すんな」
にっこりと優しく微笑んで、頭を撫でてくれた。
「伊澤は組対3課、マル暴の刑事だ」
「組対3課?マル暴?」
初めて耳にする名称に首を傾げていると、
「組織犯罪対策部の略称だ。俺達ヤクザを取り締まるのがヤツの仕事だ。通称マムシの伊澤。ヤツがいるということは、恐らく2課の須賀井も一緒だろう」
「朝っぱらから随分と仕事熱心なものだな」
ため息をつきながらコーヒーを一口、口に運ぶお義父さん。
「そうですね」
裕貴さんもため息をつきながらコーヒーを啜っていた。
お義父さんに、恐らく探りを入れに来たんだろうと言われ、大急ぎで紗智さんを那奈姉さんたちがいる離れに隠した。
一太と遥香は客間にあるテレビの前にちょっこんと座り、心さんと一緒に子供番組を夢中になって見ていた。
知らないおじちゃんに紗智のことを聞かれても知らないって言うんだ、いいな。裕貴さんが指切りげんまんし二人に言い聞かせたものの………大丈夫かな?
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