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番外編 マル暴の男
「こんな朝っぱらから何しに来たんだ」
「出産祝いぐらい渡そうかと思ってな」
「お前が義理掛け?笑わせるんじゃねぇよ。理由をさっさと言え」
お義父さんがすっと立ち上がって、然り気無く僕の前にあぐらをかいて座り直した。
「嫁と孫を目に入れても痛くないくらい可愛がってるっていう噂は本当だったんだな。お前も変わったな」
男性がゲラゲラと豪快に笑い出した。
「てめぇだけには言われたくねぇ」
お義父さんも負けじと言い返した。
「卯月に渡しても頑として拒まれてな」
出産祝いと書かれた祝儀袋をぽんと手渡された。よく見ると写真が何枚か挟んであった。
「おぃ伊澤」
「伊澤さん、話しが違う」
彼とお義父さんがほぼ同時に声を上げた。
「嫁は真沙哉やリーに拉致され怖い思いをしたんだ」
「リー一味を一網打尽にするためだ。アジトに誰がいたか、指を指して貰うだけでいい」
太惺に続き、心望もふぇ~んと急に泣き出した。
「ここちゃん大丈夫だよ」
「なかなくてもいいよ」
心さんと遥香が側に駆け寄ってくれて。
二人で心望を懸命にあやしてくれた。
「嫌なら断れ」彼にそう言われたけれど、逃げてばかりじゃはじまらないもの。僕より遥香の方がきっと怖い思いをしたはずだし、子供たちの前にいつまた現れるかも知れない。もう二度と怖い思いをさせたくないから。
覚悟を決め、恐る恐る写真に目を通した。
「一昨年辺りから石垣島や宮古島を訪れる中国人観光客が増加しているんだが、何人か忽然とクルーズ船から姿を消しているんだ。恐らく青蛇のメンバーが観光客に成り済まし密入国をしているんだろよ。写真の男達はすべて失踪した観光客だ」
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