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番外編 あなたのことを一生守らせてください
日本語ののち、額に汗をいっぱいかきながらたどたどしい中国語で懸命に言葉を紡いだ。
そんな鞠家さんの一斉一代のプロポーズに周りにいたお客さんは一様に驚きぽかぁ~んと呆気に取られていた。
「あらやだ男よね⁉お互い」ヒソヒソと話す声が聞こえていたけど、鞠家さんの耳には全く聞こえていないのか、さほど気にする素振りを見せなかった。
「鞠家さん、俺想ってくれる気持ち、嬉しいしありがとう。でも俺のことスネークハンター探してる。鞠家さん、迷惑掛ける」
「さっき言ったこともう忘れたのか?君を守らせてください、そう言ったはずだ。今、大きな仕事を抱えている。それが終わったら必ず君の側に駆け付ける。スネークハンターがどういう連中か分からないが、俺が全身全霊掛けてそいつらから君を守る」
誰もが見惚れてしまうくらい凛々しく引き締まった表情で真っ直ぐに紗智さんを見詰める鞠家さん。
嘘偽りのない一途な想いは、深く傷付き固く閉ざされた紗智さんの心を振り子のように大きく揺れ動かした。
「………でも俺……」
小さく頭 を振る紗智さん。「マー」今にも泣きそうな顔で手をそっと握られ助けを求められた。
「やぁ~~んもう、素敵じゃないの~~」
千里さんが両手をポンと叩いた。
「変われるチャンスじゃないの?ねぇ紗智」
「そうだよ」
千里さんと心さんが底抜けに明るい笑顔で紗智さんを励ました。
「おぃ鞠家、あまりしつこくすると逆に嫌われるぞ。あと、どさくさに紛れて俺の妻の手を触ってるんじゃねぇよ」
「何で分かった」悪びれる様子もなくしれっとして答える鞠家さんに、大きなため息をつく彼。
おっきな花束を紗智さんに渡したとき、鞠家さんの人差し指が一瞬だけ手の甲に触れてきたような気がした。でも気のせいだろうと思って然程気にも止めなかった。
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