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番外編 新たな脅威

エスカレーターで地上のホームに移動した彼と一太と遥香たちを見送ってから、笹原さんと千里さん、それに紗智さんと鞠家さんと一緒にエレベーターに乗り込み僕達も移動をはじめた。 扉が開いてホームに下り立ったとき、何ともいえない緊張感と異様な空気に辺り一帯包まれていた。 「どんだけ儂を待たせる気や。卯月の倅」 ドスのきいた低い声に、ホームを行き交う大勢の乗客が思わず足を止めた。一目見てヤクザだと分かる強面の顔と派手な身なり。脇を固めている弾よけの男たちに睨まれ、みな慌てて目をそらしそそくさと足早に素通りしていた。 「マ―俺の側いる」 本能的に危険を察知したのだろう。紗智さんが花束を抱っこしたまますっと前に出た。 杖をついた男性は目を皿のようにして誰かを探していた。 「睦ちゃんを探しているのよ、あの男。ダーリン、何があってもたいくんを守るのよ」 「お前を危険な目に遭わせるわけにはいかない」 「今たいくんを引き離したらギャン泣きされるわよ。大丈夫、そんなに柔じゃないから。安心して」 クスリと笑って千里さんも僕達を守るためすっと前に出た。 「人を人とも思わないお前に二度と利用されないように一番安全な場所に隠した」 「あ?」 彼の言葉に眉を吊り上げる男性。 「大方、睦を人質にして鳥飼を誘きだして口を封じ、用済みになった睦をリーにペットとして献上し、空席になっているアンダーボスの椅子に座る魂胆だろう。違うか九鬼?」 「さすが察しがいいな。巷の噂じゃあ、若いカミさんを貰ってからすっかり覇気を失くし、腑抜けになったって………ちと違ったな」 彼を見下し鼻でせせら笑った。 「だいじょうぶだよ、はるちゃん」 怖くて涙目になっている遥香を宥めながら、一太は妹の手を離さないようにしっかりと握り締めた。 彼と裕貴さんが無言のまま男性と睨み合ってるとホームに流線型の車体が静かに滑り込んできた。

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