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新たな脅威

「未知、彼は九鬼靖志。名前くらい聞いたことくらいあるだろ。九鬼総業の新しい組長だ」 笹原さんに花束と交換に太惺を渡された紗智さん。 あとは任せろ、裕貴さんに背中を押され、彼や子供たちが先に乗り込んだのを確認してから、千里さんや心さんにありがとうと一言お礼をして、紗智さんと共に急いで新幹線に乗り込んだ。 乗ったのはいいけれど、全身黒ずくめの男達が進路を塞ぐように立ち塞がり、ジロリと脅し付けるように睨まれた。ただでさえ狭い通路。逃げ道もなく完全に身動きを封じられた。 男達は恐らく九鬼総業の手の者だろう。 彼も僕と同じように取り囲まれて身動きが取れないのかも知れない。 五分もしないうちに次の駅に着く。 もしその駅で男達が一斉に下りたら、間違いなくまたどこかに連れ去られる。 多勢無勢。万が一でも太惺や心望を男達に奪われたら一貫の終わりだ。 焦ってもどうすることも出来ず次の駅のホームが車窓越しに見えてきた。 万事休す。諦めかけたまさにその時ーー 「あの、すみません。次の駅で降りたいんですけど、道を開けて頂けませんか?」 聞いたことがある声が狭い通路に響いた。 「はぁ?てめぇ、誰に向かって言ってるんだ」 男達に凄まれ恫喝されてもその人は 全く動じなかった。それだけじゃない。 「公共の場で、よってたかってか弱い女性を大勢で取り囲んで、恥ずかしくないのか?」 「あ?」 「警察を呼ばれて困るのはそっちだろう」 怯むことなく男達を一喝した。

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