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番外編最愛のあなたを
「いつまでもたもたしてんだ、早くしろ‼」
「さっさと鍵ぶっ壊せ‼」
鋭く尖った怒声がドアの向こうからはっきりと聞こえてきた。
「二人とも殺すなよ‼」
男達の狙いは紗智さんだけじゃない。彼やお祖父ちゃん、それに裕貴さんにとってアキレス腱でもある僕や子供達もだ。
「マーが兄貴から離れて一人になるの、奴ら待ってた。本当にしつこい」
吐き捨てるように口にすると、辺りをキョロキョロと見渡し何かを探し始めた。隅にたまたま置いてあった空のダンボールを見つけると、着ていたシャツを脱ぎ、ダンボールの底に敷いた。「ごめんねママの腕じゃなくて。お利口さんに待ってね」太惺をタオルでくるみそこにそっと寝かした。
「マーも隠れる。裕貴達来るまで持たせるから」
「紗智さんだけ危険な目に遭わせる訳にはいかない」
思わず身を乗り出した。
「俺、これでもアンダーだった。銃がなくても、ナイフがなくても、素手でも戦える。俺はマーを守る。だからマーは子供達守る。いいね」
すくっと立ち上がると、肩まである髪を後ろに一つに縛った。
「俺の事好きだって初めて言ってくれた人・・・・・大切な人を守れる。だから、すごく嬉しい」
気丈にも笑顔を見せて見えない敵に向かって行った。
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