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番外編 助けに来てくれた彼
紗智さんが鍵を開けようとした矢先、ドアが蹴破られた。
待ち構えていた九鬼総業にぐるりと取り囲まれていて逃げ場はもうどこにもなかった。
勝ち目がないと分かっていても、紗智さんは丸腰で怯むことなく立ち向かっていった。
そんな絶望的ともいえる状況の中、駆け付けてくれたのは………
「…………嘘、何で………?」
にわかには信じられなくて声が震えた。
「次の駅で下りて、上りの新幹線に飛び乗ったんだ。一太や遥香はさっき合流した千里と心と笹原がみててくれているから安心しろ。良かった間に合って」
裕貴さんとたった2人で、弾よけもつけずに僕や子供たち、紗智さんのために彼が来てくれた。安心してホッと一息つくなり体の力が抜けてその場にへたり込んでしまった。
「何だてめぇー」
「ふざけてんじゃねぇ」
僕達を取り囲んでいた九鬼総業の若い構成員が束になって彼と裕貴さんに襲い掛かった。多勢に無勢。明らかに彼の方が劣勢かと思われたけれど、九鬼総業の構成員達よりも彼と裕貴さんの方が圧倒的に強かった。ものの数分で力で捩じ伏せ、返り討ちにしてしまった。
格好良くて雄々しいその姿に思わず見惚れてしまった。
「雑魚には用はない。命が惜しかったらさっさと立ち去れ」
飛び掛かろうとした他の構成員をじろりと睨み付ける彼。近寄りがたい殺気立ったその雰囲気に、到底勝ち目がないと踏んだのか蜘蛛の子を散らすように、あっという間にいなくなった。
「可愛い妻と弟と、まだ首も座ってないうちの子供達を狙いやがって」
段ボールの中で半べそをかく太惺をそっと抱き上げてくれた。
「太惺、さすがは俺の息子。よく頑張ったな」
笑顔で頭を優しく撫でてくれた。
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