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番外編 助けてくれてありがとう

「まぁ、焼きもち妬きが玉に瑕だがな」 裕貴さんが苦笑いしていた。 「須賀井話しは終わったか?」 伊澤さんの声が下から聞こえてきて、彼の目付きがガラリと変わった。 「遥琉、マムシに食って掛かるだけ時間の無駄だ。未知や子供達を連れて一刻も早く福島に帰れ」 下に向かおうとした彼を裕貴さんが止めた。 「鞠家、マムシに伝えておけ。次にふざけた真似したらただじゃおかねぇぞ。分かったな」 普段は優しい裕貴さんが目を吊り上げ怒りを露にし鞠家さんを睨み付けた。 そんな裕貴さんに対し、鞠家さんは余裕綽々の様子だった。 「何がそんなにおかしい?」 「いやね、紗智や遥琉に負けないくらい俺だって未知が大好きだって顔に書いてあるから、つい。悪気はなかったんだ、ごめん」 ぷぷと失笑しながら謝っていた。 「悪かったなシスコンで」 痛いところをつかれ急に歯切れが悪くなる裕貴さん。最後はむすっとし黙り込んでしまった。 「未知立てるか?」 太惺を抱っこして手が塞がっている彼の代わりに、裕貴さんが体を支えてくれて起こしてくれた。 「ありがとう」 「いちいち礼なんかいらない。良かった無事で」 ちょっと恥ずかしいのかな?横顔が少しだけ赤くなっていた。 「紗智行くぞ」 伊澤さんの所に戻っていった鞠家さんの後ろ姿をいつまでも見送っていた紗智さん。彼に促されようやく歩き出した。

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