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番外編 鳥飼さんの本音
組事務所の前を九鬼総業の二次団体がぐるりと取り囲んでいるみたいで、自宅に帰らず度会さんの家に真っ直ぐ向かった。
玄関先に彼がいつも履いている革靴が置いてあるのを誰よりも先に見付けた一太。目をキラキラと輝かせ、遥香と仲良く手を繋ぎ彼を探しに廊下を走っていった。
「鳥飼には参った。遥琉に会うなり食って掛かかりやがった。睦が邪魔だから昇龍会に売り飛ばしたんだろうって」
ほとほと困り果ててた様子で弓削さんが頭をくしゃくしゃと手で掻きながら姿を現した。
「そんな訳ない。兄貴、誰よりも睦と颯人の幸せ考えた」
「俺や根岸もそう鳥飼に言ったんだ。でも聞く耳を一切持とうとしない。姐さんと紗智の方から事情を話して貰った方が丸く収まるかも知れない。九鬼総業の連中が組事務所の回りをうろついているんだ。こんなことで内輪揉めしている場合じゃない。この通りだ頼む」
弓削さんに頭を下げられては無下に断る訳にもいかず。
太惺と心望の子守りを度会さんと紫さんにお願いして、二人がいる奥の座敷へ急いで向かった。
一太と遥香、彼と鳥飼さんの邪魔をしてないといいけれど………不安と心配で胸がいっぱいになった。
「どうしたの?」
座敷の前できょとんとして立ち尽くす遥香の姿を見付け駆け寄った。
「あのねママ、パパととりしゃん、にいたんにめされてる」
鳥飼さんって呼ぶのは難しいみたいで、二人ともとりしゃんって呼んでいる。
娘に言われ座敷に目を向けると、
「パパもとりしゃんもだめでしょう。なかよくしないと。ママはみんなのでしょう」
いつもだいたいは僕のことで、あとはほんの些細なことで口喧嘩を始める二人。仲裁に入るのは一太の役目。でもね一太、今日は違うんだよ・・・・ママの事じゃなくて睦さんの方だから。と言っても分からないか。
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