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番外編 橘さんの本音

「頭では分かっているんだ。分かってはいるけど・・・・・」 鳥飼さんはそこで言葉を濁すと、甘えるように頬を膝にすりすりと擦り付けてきた。 右膝を紗智さんが、左膝を鳥飼さんがそれぞれ枕代わりにしてごろんと横になり、縁側から見える外の景色を3人で眺めていた。 どうしても3人きりになりたいと鳥飼さんが急に我が儘を言い出して。結局最後に折れるのは彼の方で。渋々ながらも少しだけな、そう言って3人きりにしてくれた。 一太と遥香は橘さんたちがみててくれているから大丈夫。 「睦が好きだったから離したくなかった。違う?」 「どんなに想われても、15年近く親代わりとして睦に接してきたんだ。息子も同然の睦を抱けるわけないだろう。それに俺は未知一筋だ」 「しつこい男嫌われる」 「知ってる。でも、好きな人の側にいたい気持ち、お前なら分かるはずだ。なぁ紗智、真沙哉がもし目の前に現れたらどうする?」 「浩然来る訳ない」 動揺しているのか紗智さんの声は微かに震えていた。 「側にいるのが当たり前で、失って初めて気付くものだ。そいつの事がいかに大事かってこと。もしもだ。真沙哉に罪償って真人間になる。一緒にやり直そうって言われたら?紗智、お前どうするんだ?」 「それは、その・・・・・」 直球過ぎる質問に紗智さんはすぐに答えることが出来ず黙り込んでしまった。

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