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番外編 神隠し

「相変わらず鼻が利くなお前は」 やれやれとため息をつく鷲崎さん。橘さんが相手では束になっても敵わないと観念したのか、リーと名乗る男から事務所に、弟を誘拐した。無事に返して欲しかったら………と連絡があったことを話してくれた。 「菱沼組には関わった人間すべて不幸にする疫病神がいる。色仕掛けで男をたらしこむ気色悪い生き物が。弟と鷲崎組を守りたかったらその疫病神と組織を裏切った琥珀を差し出せ。そうすれば遥は解放する。鷲崎組も九鬼総業の直参として取り立ててやる」 アジトでも同じことを言われた。 忘れようとしてもそう簡単に忘れられなくて。いまだ脳裏にはっきりとその時の記憶が残ってる。 「貴方まさか………」 鋭い眼差しで鷲崎さんを睨み付ける橘さん。 「そんな怖い顔するな。兄弟の絆はそう簡単に切れるものじゃない。俺は遥琉を兄貴として誰よりも尊敬している。未知にも大きい借りがある」 「未知をバカにされて悔しかった。未知は疫病神じゃないのに」 七海さんの腕がすっと離れていった。 「いつも自分のことは後回し。一太くんや遥香ちゃんやみんなのことを真っ先に考えて、例え危険だと分かっていても、大切な家族を守るためなら躊躇うことなく飛び込んでいく。こんなにも優しい子、どこを探してもいないから。だから、頭にきて………」 ズズっと鼻を啜る七海さん。 それを見ていた鷲崎さんが何かを思い出したのかぷぷと吹き出した。 「鷲崎さん!」 「いやね、怒った七海の顔がすごく可愛くてさぁ。ごめん、悪気はなかったんだ」

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