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番外編 生命(いのち)の線引き

「パパが好きなのね」 「うん!パパもママもみんなだいすきだよ。おねえしゃんもままのことすきになれるよ」 「そうだね。でももう遅い」 彩さんは銃口を自分のこめかみに押し当てた。 「アタシは真珠。彩じゃない」 フフと薄笑いを浮かべた。 「彩さん!」 引き金を引こうとした彼女を吉崎さんが身を挺して守った。 「お前は貝沼彩だ。罪を償って、また一からやり直したらいいだろう。一太の想いをちゃんと受け取ってやれ」 拳銃を取り上げて諭すように声を掛けた。 ちょうどその時だった。 庭の方からパンパンと銃声が二回鳴り響いたのは。 「橘、紗智、遥香に見せるな」 次の瞬間には広くて大きな胸にすっぽりと抱き締められた。 「未知も一太も見ちゃ駄目だ」 頭部を撃たれた彩さん。すぐに救急車で病院へと搬送された。 でも病院に着く直前、救急車が武装した男らに襲われそのまま車ごと奪われた。 リーに深く関わった為、余計なことを喋らようにするため連れ去ったのだろうと彼。 時間がどれだけ掛かってもいい。いつか分かり合える日が来ると思ったのに……… ごめんなさい彩さん。 貴方の人生を狂わせたのは僕のせいかも知れない。 「偉いぞ一太」 「パパとのやくそくちゃんとまもれたよ」 「さすがパパの子だな」 「うん」 「ハルちゃんもパパにだっこ」 「遥香もかぁ、よし」 彼に抱っこして貰い、たくさん褒めて貰いニコニコの笑顔になる一太。 遥香も抱っこして貰い、キャキャと黄色い歓声上げて笑っていた。 血の繋がりなんて関係ない。三人を見ていて強くそう感じた。

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