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番外編 僕が生きてこれたのはみんなのお陰、だから、今度は僕がみんなを守る

「はるっていう名前、何だろう。不思議と懐かしいんだ。何も覚えていないはずなのに……ダオレン、未知を家族のもとに……菱沼組に帰してやってくれないか?俺や地竜といたのでは未知はきっと不幸になる」 ギシッとベットが軋んで。 真沙哉さんが車椅子を手繰り寄せるとゆっくりとそこに移動した。 「ついさっき速報が流れた。リーは菱沼ビルディングの前で待ち伏せしていた須賀井や伊澤らマル暴の刑事に包囲され、自ら首を切って自殺を図った。病院に緊急搬送される途中で救急車が黒竜に襲われ車ごと強奪されたって。未知は自分を犠牲にしてまで菱沼組を守ろうとした。誰でも出来ることじゃない」 音もなく真沙哉さんの手が伸びてきて。 静かに掌に重なるとそのままギュッと握り締められた。 「未知帰るんだ。はるという人と、はるちゃんっていう元気な女の子が君の帰りを首を長くして待っているんだろう。地竜が戻ってくるまでに、リーの手下が報復攻撃を仕掛けてくる前にここを出ろ。短い間だったけれど、妻でいてくれてありがとう。それに一太。ママ想いで姉弟想いのすごくいい子だな」 「真沙哉さん………」 堪えていた涙が目蓋の縁から零れ落ち頬を濡らした。 「マーナオ、未知や子供達を早く外に連れ出してくれ」 ダオレンさんを目で脅しながら廊下に向かって声を掛けるとスエットに着替えたマーナオさんが姿を現した。

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