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番外編 裏切ることは絶対に許さない

「止めておけ。お前が敵う相手じゃない」 地竜さんが苦笑いしながら宥めた。 「おい地竜、だだのガキだぞ」 「だだのガキじゃない。あの播本の曾孫だ」 地竜さんのその一言に男の表情が一変した。 「播本だけは敵に回してはいけないーー浩然(レオハン)やリーが口癖のように言っていたからな」 「おぃ地竜」 男が声を荒げた。 「仕方ないだろう。俺だって知らなかったんだ。播本の孫と曾孫だって分かったのは昨日の夜だ」 「はぁ?」男がやれやれとため息をついた。 「リーを捕まえたことだし。本来の目的は達成できた。勘の鋭い播本のことだ。ここもすぐに嗅ぎ付けるだろう。その前に上海に引き上げる。コイツらはまだまだ利用価値がある。人質として連れて帰る」 「正気か?浩然の妻子だぞ?」 男に詰め寄られてもなお、地竜さんは怖いくらい落ち着いていて、不適な笑みを浮かべ余裕そのものだった。 「ママおふろ」 一太に裾をツンツンと引っ張られ、ハッと我に返った。 「ごめんね」 昨日は三人ともシャワーで軽く済ませた。 いっぱい泣いて、いっぱい汗をかいたから今日こそはちゃんとお風呂に入れてあげないと。 「えっと………」 浴室のドアを開けるなりしばし固まってしまった。一面大理石のピカピカの床の上にあったのは猫足の可愛らしい楕円形の浴槽だった。 一太は一人でも入れるからいいけれど……… 悩んだ末、腕捲りし、太惺と心望を一人ずつ沐浴させることにした。

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