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番外編 それぞれの愛のかたち

「鞠家さん、優しいから……」 恥ずかしくて高行さんとはまだ呼べないみたいで、そこがまた紗智さんらしくて可愛い。 那和さんとはこの1ヶ月、紆余曲折あったけど、言いたいことを言い合い、たまに喧嘩してーーこれからは恋敵(ライバル)としてではなく、友人として付き合っていくことになったみたい。 紗智さんも那和さんも、千里さんと心さんと馬が合うのかすっかり仲良しに。 「そういえば那和、彼氏の面会行ったの?」 「ボクが動けば、マーやみんなに迷惑掛ける。大丈夫、手紙貰ったから」 「手紙?」 「そう、長尾さん持ってきてくれた」 長尾さんは真沙哉さんの国選弁護人。 真沙哉さんは、わざわざ弁護人を立てる必要はないからと一回断ったものの、外にいる那和さんと連絡をとる為に長尾さんに弁護人を頼むことにしたのだ。 「それがね~~」 「ちょっと紗智、それ以上禁句」 今度は那和さんの顔が真っ赤になり、急にそわそわし始めた。 「ペアの指輪。彼、那和に渡すつもりでいた」 「ちょっと紗智」 那和さんが恥ずかしそうに顔を逸らした。 「RからMへ……浩然(レオハン)からマーナオへじゃなく、MからNへ……真沙哉から那和へに彫り直して欲しいって頼んできた」 彼がひょっこりと姿を現した。 両腕にしっかりと抱っこされている心望は、彼のシャツをぎゅーと掴み、キラキラ輝く天井のシャンデリアに目を丸くしながら、あちこちキョロキョロと見回していた。

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