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番外編 それぞれの愛のかたち

「俺は知らなかった。茨木さんに、紗智を俺に引き合わせてくれと頼んだのかお前だって………リーに利用されただけで何も悪いことはしていない。すごく真面目でいい子だから、どうか紗智に、本当の愛が何か教えて欲しい。日本で生き直すチャンスを与えて欲しい。一人では絶体無理でも二人なら………それが出来るのは鞠家さんしかいない、そう言ってくれたんだよな橘」 「私は何も………」 「惚けるなよ」 鞠家さんはウェディングブーケを差し出した。 「千里、悪いが太惺を代わりに抱っこしてくれないか?。橘、柚原、一緒に式を挙げてくれ。俺や紗智だけが式を挙げる訳にはいかない。この通りだ頼む」 鼻を啜りながら深々と頭を下げた。 何で名前が゛さち゛なのか・・・・度会さんに聞いた」 僕の手をそっと握り締めた紗智さんの右手は微かに震えていた。 「゛さち゛は幸せの意味。優しい心と思いやりの気持ち、糸のように紡ぎ、日本でずっと幸せに暮らせるように。だから゛紗智゛とある人が名付けてくれた。度会さんそう教えてくれた。その人が誰か分かった」 一度は止まったはずの涙が紗智さんの頬を再び濡らしていた。 「俺何で今まで気付かなかったんだろう………ずっと側にいたのに………」 肩を震わせながらその人をーー橘さんをじっと見詰めた。

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