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番外編 それぞれの愛のかたち
「マーや橘さんいたから、俺、寂しくなかった。怖くなかった。だから、前に踏み出せた。鞠家さんとこうして出会うこと出来た。橘さん、一緒に結婚式を挙げてください」
鼻を啜りながら頭を深々と下げた。
「ほら、お兄ちゃん」
涙で濡れる目元をハンカチで押さえながら千里さんが橘さんの肩をそっと押した。
「たいくんはアタシがみてるから」
「でも………」
それでも頑なに首を横に振る橘さん。
「たく、相変わらず強情っぱりなんだからお前は………まぁ、そこがまた可愛いんだが……たまには素直にはいって言ってみたらどうだ優璃」
柚原さんは穏やかに微笑み掛けると、橘さんの腕に抱っこされている太惺を抱き上げ、千里さんに託すと、代わりにウェディングブーケを手に握らせた。
「なぜ黙っていたんですか」
ムッとし柚原さんを睨み付ける橘さん。
「だってさぁ、結婚式を挙げようって言っても、絶体に首を縦に振ってくれないだろ?」
悪びれる様子もみせずしれっとして答える柚原さん。
「ままたん、これぱぱたんがから」真っ白いタキシードを遥香から渡され、すべてを悟った橘さん。ますます不機嫌になった。
「夫婦喧嘩はそれくらいにして、早く着替えてきたら?」
「そうだよ」
千里さんと心さんに急かされ渋々ながらも席を立つと、柚原さんと一緒に控え室に向かった。
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