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番外編 心に降る雨
「いつまでそこにいるつもりだ」
彼が廊下に向かって声を掛けると鞠家さん本人が姿を現した。
その目は赤く腫れ上がっていた。
「紗智」にっこりと微笑んで名前を呼ぶものの、紗智さんは首をぶんぶんと横に振り、僕の首にしがみついた。
「うちに帰ろう」
駄々を捏ねる子供をあやすように髪を優しく撫でた。
「何で優しくしてくれるの?俺、キレイじゃないよ。沢山の男のひとと・・・・なのに、何で?」
声を震わせる紗智さんに鞠家さんは、
「今の1000倍、絶対に幸せにするって誓っただろう。紗智、うちに帰ろう」
「うち?」
「あぁ、俺達のうちだ」
紗智さんが行き来しやすいようにと組事務所からわずか徒歩3分の距離にあるマンションの一階に新居を構えた鞠家さん。
「するの?」
「するの?何をだ?」
不思議そうに首を傾げる紗智さんに、おうむ返しで聞き返す鞠家さん。
「だからセックス。する?」
「・・・・・・・」
一瞬で鞠家さんの表情が引きつり、笑顔が凍り付いた。
「紗智、そういうことは人前で言っちゃいけないってさっきも言ったはずだ」
「何で?やっぱり俺のこと嫌い?」
「嫌いな訳ないだろう。新婚なんだし」
天使のようなあどけない顔で、悪魔のようなことをストレートにずばずばと聞いてくる紗智さんにたじたじになる鞠家さん。
「たく、人騒がせな」
「なんだかんだって言ってラブラブじゃないの」
彼や千里さんたちみんな呆気にとられていた。
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