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番外編 閨怨

カタン。とドアが開く音が聞こえてきた。 「たく貴方という人は・・・・・未知さん体調が優れないんですから、くれぐれも無理をさせないようにって、今朝言いませんでしたか?」 彼の広い肩に遮られ橘さんの姿は見えなかったけど、声が聞こえてきたから顔から火が出るくらい恥ずかしくて。全身から血の気が引いた。 「そんなこといつ言ったんだ。聞いてないぞ」 しれっとして答える彼に橘さん、深いため息をついていた。 「終ってからでいいので、未知さんにこれを渡して下さい」 「何だそれ?体温計か?」 「はぁ?」 橘さんの声色が一瞬で変わった。 「貴方は馬鹿ですか。子供を四人も作っておいて。ふざけているのもいい加減にしてください」 「三人だぞ」 「三人でも四人でも同じです」 ついに橘さんの堪忍袋の緒が切れた。 「それは妊娠検査薬です。おっぱいをあげている間は生理は来ないものの、妊娠の可能性はあるので、ちゃんと避妊するようにと言いましたよね?黒竜や、青蛇の残党のこともあるので、せめて一年は開けるようにと、茨木さんと卯月さんにも言われたはずです。なのに貴方は………」 「だって仕方ないだろう」 中に入ったままの彼の指が奥のコリコリとした場所をぐいっと押してきた。 (あっ…………っ) ぴくっと背が震え、思わず声が出そうになり慌てて口を手の甲で押さえた。

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