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番外編 閨怨

肩がぶるっと震え、はっとして目を覚ました。視界に入ってきた淡い暖色系の照明に心臓がどくんと跳ねた。 (え?ここ、どこ…………?) 一瞬自分がどこにいるか分からなくて。 (確か彼と…………) 戸惑いながら起き上がり、部屋の中を見回して。腕に巻かれた点滴のチューブを見てようやくここが上澤先生の診療所だと気が付いた。 「起きたか?」 カタンとドアが静かに開いて、彼と南先生が入ってきた。 「あ、あの…………」 確か今日は日曜日で休診のはず。 「橘が南先生に、未知が妊娠したかもって前もって連絡をしていたみたいだ」 「双子ちゃん産んだとき悪阻が酷かったからね。体調はどう?まだ気持ち悪い?」 南先生に心配そうに顔を覗き込まれた。 「みんなに大事にされる未知さんが羨ましいわ。父が一番慌てていたかも」 「すみません、迷惑をお掛けして………」頭を下げた。 「迷惑だなんてこれっぽっちも思っていないわよ。体調が落ち着くまでゆっくり休むといいわ」 南先生が身体を支えてくれて。 再びベットに横になった。 「あっ、太惺と心望におっぱいをあげないと。オムツも交換してあげないと。一太や遥香にも…………」 子供達のことを思い出して慌てて起き上がろうとしたら、 「子供達の世話は橘たちが分担してみててくれているから心配ない。先生の言うことを聞いて大人しく寝てろ」 彼にそう言われてしまった。

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