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番外編 閨怨
吐き気を催した僕を介抱してくれていた彼が、何気に下を見たらシーツが真っ赤になるくらい出血していることに気が付いて、
「誰か救急車!」
「南先生に連絡してくれ!」
と大声を張り上げた。
すぐに橘さんと柚原さんが駆け付けてくれて。上澤先生の診療所に担ぎ込んでくれたみたいだった。
彼や橘さんを決して疑う訳じゃないけれど………
なんのへんてつもないまっ平らなお腹にそっと手をあてた。
シーツが真っ赤になるくらい出血していたということはつまり………
すぐに妊娠検査薬で確認していれば、こんなことにならなかったのかも知れない。
ごめんね、苦しかったよね。
おなかの中でちゃんと育ててあげられなくてごめんね。
お兄ちゃん達とお姉ちゃん達に会いたかったよね。
悔やんでも悔やみきれなくて。
気付けば声を出して泣いていた。
「マー」
カタンとドアが開いて遠慮がちに紗智さんが入ってきた。勿論鞠家さんも一緒だ。
二人に心配を掛けたくないから、慌てて涙を手の甲でごしごしと拭った。
「どうだ体調は?」
「ごめんなさい迷惑を掛けて………もう何ともないから」
「強がらなくていいのに。特別に俺の紗智を貸してやるから泣きたいだけ泣いたらいい」
(ん?特別に俺の紗智…………?)
鞠家さんの言い方がおかしくて思わず吹き出しそうになった。
「マー聞いて。遥琉さんより、すっごく焼きもち妬き。花におはようって話し掛けていただけなのに、ブスッとして目も合わせてくれない」
「紗智が好きで好きで堪らないだ。可愛くて可愛くて仕方がないだ。しょうがないだろう」
鞠家さんの言葉に紗智さん、耳まで真っ赤にしていた。
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