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番外編 閨怨
眠り眼を擦りながらも寝ないで待ってくれた一太。布団に潜り込んで両腕で包み込むように小さな身体をぎゅーーっと抱き締めた。
「ママくるちい」
「あっ、ごめんね」
慌てて腕の力を緩めた。
「もうだいじょうぶなの?」
「うん。あのね一太…………」
本当は妊娠が確定してから伝えるべきなのだろうけれど、一番我慢をさせて、一番寂しい思いをさせている一太に、まずちゃんと謝って、それから赤ちゃんが出来たことをちゃんと伝えることに決めた。
「太惺や心望にかかりっきりで、全然構ってあげられなくてごめんね。遥香のお世話も一太に頼ってばかりでごめんね。いつもほったらかしで、これじゃあママ失格だよね」
一太は不思議そうに首を傾げ、きょとんとしていた。
「あのねママ」
そこで一旦言葉を止めると、
「ぼくひとりであそんでもつまらないよ。パパやママが、ハルちゃんとたいくんと、ここちゃんをぼくにプレゼントしてくれたでしょう。だから、ぜんぜんさみしくないよ」
「一太………」
思いもしなかった言葉に感極まり涙が溢れた。
「それに、ママのおなかにあかちゃんがいるんでしょう?」
「何でそれを?」
「だってパパとたちばなさんがおはなししてた。いちた、がんばっておせわするね。だからママ、もうなかないで。いちたは、ママのわらったかおがいちばんすきだもの」
頼もしい一太の一言に、ただでさえ泣き虫な僕の涙腺は呆気なく崩壊した。
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