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番外編 閨怨

「見るな」彼の腕が背中に回ってきて、広い胸に抱き寄せられた。 「遥琉、那和さん、未知さんを中に。早く‼」 病院の中から橘さんの声が聞こえてきて。急いで駆け込んだ。 「無事で良かった」 南先生がすぐに自動ドアを施錠して、開かないようにしてくれた。 「橘さん・・・・・何で?」 「那和さんに嫌な予感がすると言われまして、鞠家さんにすぐ連絡をしたんです。さすが元刑事ですね。手回しが早くて驚きました。警察に取り囲まれて、逃げ場はもうないはずです」 「怖かった・・・・」 ほっとした瞬間、力が抜けて。 膝から崩れるようにその場に崩れ落ちた。 「てめぇら、真珠を守れ!」 それまでの静寂を打ち破るようにサイレンの音がけたたましく鳴り響き、男達の怒声と喚き散らす声、そして奇声をあげながらドンドンと激しくドアを叩く音が洪水のように一気に押し寄せてきた。 ドアがいつ蹴破られてもおかしくない切羽詰まった状況に、ガタガタと震えながら、耳を両手で塞いだ。 すっかり腰が抜けてしまい、起き上がることが出来なかった。 「遥琉、挑発に乗ってはいけません。それこそ相手の思う壺です」 「未知を侮辱されて、このまま黙っていろって言うのか」 怒りに身を任せ、外に戻ろうとした彼を、橘さんや那和さんが必死になって止めた。

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