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番外編 君を、愛していると言ったはずだ

木々の間から差し込んでくる茜色の薄日がエメラルドグリーンの水面に小さく揺れていた。 「未知さん、そろそろ戻りましょう」 「ママ!おうちかえろ」 橘さんと遥香が呼びに来てくれた。 太惺と心望がお昼寝をしている間、すぐ目の前にある鏡ケ池に散歩に出掛けた。 あれからあっという間に1ヶ月が過ぎた。 今僕達が身を寄せているのは安達太良山の麓にある温泉町。蜂谷さんのご両親がそこでペンションを経営していて、そこを手伝いながら、といっても僕は何もしていないけど・・・・居候させて貰っている。 子供達とおなかの子を守るため、離れて暮らすという苦渋の決断を下した彼。週末はちゃんと会いに来てくれる。 信孝さん、ナオさんも、晴くんと未来くんを連れ昨日こっそり会いに来てくれた。 今回のことで一太はまた幼稚園を転園することになってしまった。あと半年で卒園だったのに………一番の被害者は一太だったのかも知れない。 ペンションに戻ると、一太は紗智さんと近所の子供達と仲良くサッカーをして遊んでいた。 蜂谷さんのご両親や、ご近所さん皆さん余所者である僕達親子を温かく迎えてくれて。 一太にもあっという間に友達が出来た。 「一太君とハルちゃんは私と紗智さんかみてますから、未知さんは中に入ってください」 「あの、橘さん………」 聞きたいことは山のようにあった。 だって僕のせいでみんなに迷惑ばかり掛けているんだもの。何も出来ない自分が不甲斐なかった。

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