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番外編 君を愛してる、そう言ったはずだ
剣道の有段者でもある惣一郎さん。
剣道着に着替え早朝から竹刀を振っている。一太は幼稚園バスが迎えにくるまでの間、目をキラキラと輝かせ憧憬の眼差しで見詰めている。
儂が怖くないのか?
初めてここに来た日、そう聞かれた一太は笑顔で大きく頷いた。
顔が怖いからか、孫はみな怖がって誰も寄ってこない。一太はやっぱり播本の曾孫だな。肝が座ってるって。
その時惣一郎さんから、マル暴の刑事だったことやお祖父ちゃんやお義父さん達とサシで酒を交わす仲だったということを教えて貰った。
「そうおじちゃん、いってくる」
「おぅ、行っておいで」
いつの間にかバスの見送り、お迎え担当は惣一郎さんになっていた。
笑顔で手を振りバスを見送ると、また黙々と竹刀を振り始めた。
「未知さん」
邪魔をしないようにそぉーと静かに家に戻ろうとしたら、惣一郎さんに声を掛けられて、どきりとした。
「報道規制が敷かれ、まだ公表されていないが、Y医療刑務所が何者かに放火され、その騒ぎに乗じ収監されていた受刑者の一人が忽然と姿を消したらしい」
Y医療刑務所にはお兄ちゃんが収監されているはず。そんなまさか・・・・
一瞬耳を疑い、そして頭の中が真っ白になった。
黒竜は彩さんを誘き出すためなら手段を選ばないって彼が言っていた。
だから、おそらく、ううん間違いなく黒竜に連れ去られたんだ。
「・・・・・僕のせいだ・・・・・」
力なく項垂れてポツリと呟いた。
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