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番外編 暗澹(あんたん)

南先生に紹介して貰った麓の町にあるN市民病院まではタクシーで15分ほど。今日は月一回の妊婦健診の日。子供達を橘さんたちに頼み病院へと向かうことになっていた。状況が状況だけに本当は一週間予約をずらせばいいのだろうけれど、おなかの子に万が一のことがあっては手遅れになるからと惣一郎さんと和江さんに言われ、那和さんと鳥飼さんと一緒に出かけることにした。 あれ?橋本さんじゃない。 今日は随分と若い人だ。 橋本さんは惣一郎さんの茶飲み仲間。出かけるときは一番信頼できる橋本さんに来てもらっていたのに。具合でも悪いのかな? 「どうした?」 躊躇していたら鳥飼さんに声を掛けられた。 「ううん」慌てて首を横に振り、気のせいだろうと自分に言い聞かせ、先に乗り込んだ那和さんに続いて後部座席に乗り込んだ。 鳥飼さんは首を傾げながら助手席に乗り込んだ。 そしてタクシーが走り出して3分後ーー 町内に唯一あるコンビニが見えてきた。あとは山を下り市街地まで出ないとコンビニやスーパーはない。 「すみませんがそこのコンビニに寄って貰っていいですか?」 「コンビニにですか?」 運転手さんの声色が変わった。 「一分もかかりませんのでお願いします」 一つため息をつくと、ウィンカーを右に出し、コンビニの駐車場に入るとお店の前でタクシーを停車させた。

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