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番外編 暗澹

「姐さん、ほら那和も。飲みものを買ってこよう」 鳥飼さんはすぐに車から下りると、後部座席のドアが自動で開く前にドアを半ば強引に開けた。 急かされ下りると、鳥飼さんが僕と那和さんの手を握ると、まるで運転手さんから逃げるかのように店の中に駆け込んだ。 「姐さんの言う通り、何か変だ」 鳥飼さんが鋭い眼差しをタクシーに向けた。 「惣さんところの未知ちゃんじゃないか」 これまた惣一郎さんのお茶飲み仲間の店長さんが声を掛けてくれた。そしてもう一人。 「また何かあったのか?」 たまたま巡回中で店内にいた駐在所のお巡りさんが声を掛けてくれた。 「気のせいかもしれないが………」 鳥飼さんが手短に状況を説明すると、 「初めて見る顔だな。しかも目を合わせようとしない」 タクシーに目を向けたお巡りさんがボソッと呟いた。 「卯月さんは?」 「あと10分くらいで着くと連絡があった」 「そうか」 脇に抱えていたペットボトルをぽんとレジに置くと、そのまま店外に出てタクシーにゆっくりと、警戒しながら近付いていった。 応援は呼んだ。運転手に声を掛けるからその隙に事務所の奥の非常口から出て、すぐ近くにあるバスの待合所で卯月さんを待つようにそう言い残して……… 「姐さん行ってください」 「鳥飼さんは?」 「すぐにあとを追いかけます。那和、姐さんを頼む」 一般人を巻き込むわけにはいかないと鳥飼さん。彼に連絡をしてくれた。 店長さんに事務所のドアを開けて貰い、那和さんと中に入ろうとした時だった。 パンパンと乾いた音が二回鳴り響いたのは。 「那和、何ぼけっとしているんだ!早く姐さんを連れていけ!」 鳥飼さんが声を張り上げた。 「マー行こう」 那和さんに急かされ事務所の中に駆け込んだ。事務所の奥の非常口から外に出て、道路を横切るとすぐにプレハブの小さな待合所が見えてきた。

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