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番外編 暗澹

「待て‼」 中に入ろうとしたら、後ろから追い掛けてきた鳥飼さんに止められた。 「誰がいるか分からないんだ。少しは危機感を持て」 警戒しながら中をそぉーと覗き込んだ。 長椅子に座りバス待ちをしていたのは杖をついた白髪のおじいちゃんだった。ただならぬ雰囲気を漂わせるおじいちゃんに鳥飼さんも那和さんも何かを感じ取ったみたいで「何者だ?」おじいちゃんを睨み付けた。。 「地竜《ディノン》の愛人《アイレン》の顔をどうしても見たくてな」 張りのある太い声が待合所に響いた。 「安心しろ。仲間の妻には手を出さない、危害は加えない」 ニヤリと笑うと、よっこらしょと掛け声を掛けて杖で体を支えながら立ち上がった。 ちょうどそこへ駅に向かうバスが滑り込んできた。 「あの人嫌いの地竜《ディノン》が、まさか浩然《レオハン》の妻とそういう仲になっていたとはな・・・・・」 そんなことをぶつぶつ呟きながら、バスに乗り込もうとした。 そのとき何かに躓いておじいちゃんが転びそうになり、思わず駆け寄り身体を支えた。 「その優しさが時には仇になる。よく覚えておけ。地竜《ディノン》の愛人《アイレン》さんよ」 おなかにチラッと目を向け、脅しつけるようにそう言うと何事もなかったようにバスに乗り込んでいった。

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