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番外編 暗澹
「でも助けてもらった恩を忘れ、組織を裏切ったのは事実だ。マーナオには死んでもらうしかない。それに琥珀もだ。余計なことを喋る前に口を封じなければならない」
「そんなの酷いよ。同じ人間がすることじゃない」
自分達の私利私欲のため、那和さんと紗智さんを殺すなんて。
「地竜さん、待っ・・・・・」
その時だった。
目を開けていられなくなるくらい眩い光に包まれたのは。
地竜さんが太惺と心望を抱き起こすと、僕達を守るように抱き締めた。
やや遅れて、ガシャーンと窓ガラスが割れる音が轟き、暗闇を焦がすかのような真っ赤な炎が上がった。
「車が燃えているだけだ。安心しろ」
地竜さんは表情一つ変えず淡々と答えていた。混乱に乗じ紗智さんと那和さんを拐うか、もしくはその場で殺すつもりだ。
一太と遥香の命も危ない。
「お願い離して‼」
子供達を助けに行かなきゃ。
「乳飲み子を二人抱え、妊婦であるお前に何が出来る?自分の命を大事にしろ」
「紗智さんと那和さんを見殺しするわけにはいかないの。地竜さんにとって二人は邪魔者でしかないけど、僕にとっては一太と遥香と同じくらい大切な子供。だから離して!助けにいかないと!」
サイレンの音があちこちから聞こえてきた。
手足をバタつかせ、何とかして腕を振りほどこうとしたけれどびくともしなかった。
「未知‼」
階段を駆け上がってくる彼の声がはっきりと聞こえてきて、地竜さんの目付きが、声がガラリと変わった。
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