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番外編 暗澹

「遥琉さん、一太と遥香は?紗智さんと那和さんを助けないと」 藁をもすがる想いで彼の腕を強く引っ張った。 「未知、まずは落ち着くんだ。一太と遥香は、橘と惣一郎さん、和江さんと一緒だから安心しろ。紗智と那和も無事だ。尊は玉井らサツが行方を追っている。まだ近くに潜んでいるかも知れないから、今は動かない方がいい」 温かくて広い胸に抱き寄せられて。 宥めるように背中を撫でられた。 「おい待て!!」蜂谷さんが地竜さんを呼び止めたけれど、口角を微かに上げニヤリと笑うとそのまま窓から飛び降りた。 彼に心望を抱っこしてもらい、太惺を両腕で抱っこして、蜂谷さんやお巡りさんに付き添われ一階におりると、消防車が何台も出て消化活動をしていた。 山颪の強風の影響なのかも知れないけれど、消火活動は上手くいっていないみたいだった。消火剤を浴びて炎が燻っているところもあれば、まだ燃え盛っている部分もあった。 「未知さんに火を見せたら駄目でしょう」 和江さんが慌てて駆け寄ってくれた。 「大丈夫だった?怖かったでしょう」 焦げ臭い匂いがリビングに充満しているからと、フロントの前にあるバーラウンジに移動した。不安げな表情で身を寄せ合うお客さんの中に一太や遥香、それに紗智さんと那和さんの姿を見付け胸を撫で下ろした。 温かい飲み物を配っていた橘さんと惣一郎さんが2人に声を掛けると、「マー」紗智さんと那和さんが飛び込んできて、そのまま2人にぎゅーーっと抱き締められた。

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