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番外編 きみが癒し 生きる希望
「あのな千里・・・・・彼は惣一郎さんの息子の蜂谷だ。マル暴のデカだ」
彼がほとほと困ったようにため息をついた。
「マル暴のデカ?それならちゃんと挨拶しなきゃね」
千里さんが蜂谷さんにつかつかと歩み寄った。
「はじめまして昇龍会・組長補佐の笹原千里です。妹の未知を匿って頂き、何とお礼を言っていいのか・・・・・これからもよろしくね、はっちゃん」
ウィンクをされ投げキスまでされ、返す言葉もなくしばし唖然としていた。
予想していた千里さんとだいぶイメージが掛け離れていたみたいで、かなり驚いていた。
冬の弱い光が窓から差し込んでいた。
今日も朝から賑やかだ。
「地竜、何でテメェーがいるんだよ」
「五月蝿いな」
太惺と心望にミルクをあげていたら、地竜さんがいつものように窓から入ってきて、膝を枕にしゴロンと寝そべってきた。
鳥飼さんにどんなに怒られてもまったく動じない。さすがだ。
「指名手配されている黒竜のナンバー2がいるって蜂谷にチクるぞ。いいのか?」
「どうぞ、勝手に。それに俺はもう黒竜のナンバー2じゃない」
地竜さんの表情は以前とは違って少しだけ柔らかくなっていた。
「あぁ、そうだったな。死神(スーシェン)のリーダーだったな。また訳の分からないものを作りやがって」
「人を人とも思わない紫竜のやり方には賛同出来ない。俺の大事な妻の身内でさえ平気で利用する。だから脱退した。手下共がどうしても俺に付いて行きたいんだって言うんだ。置いてこれる訳がないだろう」
黒竜は二つに分裂した。
穏健派の地竜さんが新しく死神(スーシェン)という組織を立ち上げたのだ。
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