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番外編きみが癒し 生きる希望

「二人ともそのくらいにしたらどうですか。そろそろ襲名式が始まりますよ」 橘さんが部屋に入ってきた。 福井さんが那奈お姉ちゃんや子供たちとの生活を優先させたいと、千里さんに組長の椅子を譲ったのは、お兄ちゃんが警察に保護されてから僅か2週間後のことだった。 ヤツの愛妻家と子煩悩は有名だからな。妻子を二度と危ない目に遭わせくない気持ちは分かるんだが………そんなことを口にしため息ばかりついていた彼。 「青二才の俺が若頭など、身の丈に合わない。そう言っていたのに……」 クスリと橘さんが苦笑いした。 紫さんから贈られた五ツ紋の色留袖を纏い、居並ぶ古参の幹部の前を臆することなく前を見据え堂々と歩く千里さん。その風格はすでに組長そのものだった。 彼はハイブランドのダークレーのスーツに身を包み、千里さんの一歩後ろを威風堂々と歩いていた。 千里さんを補佐し、直参の組長を取り纏める本部執行部・若頭としてだ。 「まさか女が継ぐとはな・・・・時代も変わったな」 ネット配信されている映像を見て地竜さんも目を丸くしていた。 蜂谷さんと同じことを言ってる。 本当は男だと知り腰を抜かすくらい驚いて唖然としていた事を思い出して、ププっと思わず吹き出してしまった。 「何がそんなにおかしいんだ?」 怪訝そうに顔をしかめる地竜さん。 「ごめんなさい笑ったりして」 「未知さんに悪気はありませんよ」 「お前にいちいち言われなくても、そんなの分かってる」 彼と同じで地竜さんも橘さんが苦手みたい。

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