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番外編 黒い魔の手
「偉いぞ一太。さすが上総の孫だ。ハルちゃんとあとで駄菓子屋に行くか?」
「うん!」
観光案内所の隣に昔ながらの小さな駄菓子屋さんがある。店を構えて四半世紀。小さい子供から観光客まで、老若男女に愛されている。
「だがしや………って?」
「何?初めて聞いた」
紗智さんと那和さんが首を傾げた。
「だがしだから、分かった!ダーツバーだ!」
「あのね那和、ただ行きたいだけでしょう」
エヘヘと那和さんが笑っていた。
「そうか二人はまだ行ったことがなかったのか」
「ガムやキャンディーとかおかしがいっ~~ぱいあるんたよ。さっちゃんもなおちゃんもいっしょにいこう」
一太はさっそく二人と約束げんまんの指切りをしていた。
宵闇が迫る山あいののどかな温泉町をパトカーが何台も行き交っていた。旅館やホテル、お土産店、それに空き家まで、不審な人物を見掛けなかったか捜査員が一軒一軒確認して回っていた。
「ここ20年近く犯罪とはほとんど無縁だったのにな」
「そうだな」
リビングには惣一郎さんのお茶飲み仲間が勢揃いしていた。
ご近所さんみんな顔馴染み。
小さい町だから一太が狙われたと、あっという間に広がった。
「子供は地域の宝だ。俺達で一太やハルちゃんを守らないと誰が守るんだ」
コンビニエンスストアの店長さんが口火を切り、地元の消防団と一緒に夜通し交代でパトロールをしてくれることになった。
そこまでしてもらう訳にはいかないと、丁重に断ったけど、惣一郎さんの孫とひ孫を守らないと道理が通らないと押し切られてしまった。
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