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番外編黒い魔の手

「みんないるから大丈夫。遥琉さんの方こそ気を付けてね」 『おぅ、ありがとうな』 嬉しそうに笑って電話が切れた。 「マー、橘のところに行こう」 「一太くんとハルちゃんと離れちゃだめ」 紗智さんと那和さんに言われ、急いで身支度を整え、太惺と心望を二人に抱っこしてもらい、リビングに向かおうとした。 向かおうとしたけれど・・・・・ 遠くで雷鳴が轟いたかと思えば、強い雨が急に降りだした。 「未知さん行きましょう」 鳥飼さんに促され階段まで移動すると、僕達以外誰もいないはずなのに黒いフードを目深く被った男がそこに座っていた。 「琥珀(フーボー)、マーナオ久し振りだな」 あっ、この声。 さっき電話を掛けてきた男の人の声に似ている。 「ボスとアンダーボスを一気に失った青蛇はリーと黒竜にいいようにされ、堕ちるところまで堕ちた。何故、組織を裏切った?」 さっきとは違い流暢な日本語で淡々と口にすると、紗智さんを恨めしそうに睨み付けた。 「裏切った訳じゃない。浩然(レオハン)のやり方、付いていけない」 「じゃあ、何で俺達を捨てた?邪魔だからか?」 「そんな訳ない。お前達のことは、ちゃんと浩然に頼んだ。路頭に迷うことがないように面倒みてくれって」 「嘘だ。須賀井の情人としてヤツに情報提供していたんだろ?秘密裏にサツとも繋がっていたんだろう?違うか?」 「違う」 太惺が大きい声にびくっとして、目を丸くして紗智さんを見上げた。 「ごめんね。びっくりさせちゃって。俺も那和もずっと温かい家庭に憧れていた。甘えたいときに甘えさせてくれる優しいマーがいて、怒るとちょっと怖いオヤジがいるごく普通の家庭。だから、組織を抜けて、マーとオヤジの子供になった。俺達だけが幸せになったこと詫びる。謝る」

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