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番外編 ごめんね、
「未知さんが気付かないだけですよ。遥琉は毎晩、紗智さんや那和さんが寝るのを確認してから、布団の中にそぉーと潜り込んで、熟睡している未知さんや子供達の寝顔を幸せそうに眺めているんですよ」
そうなの、びっくりして目を丸くしたら、橘さんや心さんにクスクスと笑われてしまった。
「愛妻家だからね、遥琉は」
「未知さんは愛されているんですよ」
太惺と心望が小さなお手手を懸命に伸ばし、二人に抱っこをせがんだ。
「本当に可愛いよね。たいくんもここちゃんも。全然人見知りしないし。このままパパに似ないでママに似るんだよ」
太惺と心望のまんまる笑顔に心さん、顔が緩みっぱなしになり、メロメロになっていた。
「遥琉はまだ帰ってこないの?」
千里さんが戻ってきた。これから鷲崎さんという人達との会合があるみたいで仙台に向かうみたい。
背が高くて細身の体に艶やかな着物姿はよく似合う。あまりの美しさに目を奪われポカンとしていたら橘さんと心さんに笑われてしまった。
「未知、あのね。言いにくいんだけど、見た目は女なんだけど、本当は男なんだよ」
え?嘘………
心さんの言葉に耳を疑った。
「これも非常に言いにくいんですが、私の実の弟です」
橘さんの言葉に二度びっくりして目をパチパチしていたら、今度は千里さんに苦笑いされてしまった。
「ゴメンね、早く言うべきだったんだけど」
謝りながら、手にしていたさくら色のリップを唇に薄く塗ってくれた。
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