708 / 3627
番外編 ごめんね、
そろそろ福島駅に向かわないと新幹線に間に合わないぞ、裕貴さんが彼と千里さんを呼びに来てくれた。
初めて見る小さな男の子と一緒だった。
2才くらいかな。目がくりくりしていて、とても可愛らしい男の子だった。
「息子の優真(ゆうま)だ。未知は会うのが初めてだろ?俺は心さえいれば充分だったんだが、跡取りがどうしても必要だって親父達に説得されて、茨木さんが引き取って面倒をみていたこの子を養子に迎えたんだ。優真、挨拶をしろ」
裕貴さんに言われ、慌てて頭を下げる男の子。
「もうちょっと優しく出来ないの?」
「五月蝿いな」
むすっとしてプイッと顔を逸らす裕貴さん。
「おぃおぃ、息子に焼きもちか?」
「そう言うお前だって娘に焼きもちを妬いているだろうが」
「は?」
買い言葉に売り言葉、口喧嘩を始めた二人。
「ひろパパと、おじちゃん仲良しだね。ゆうくん、おいで」
心さんが両手を広げると、ニコニコと笑いながら、胸に飛び込んでいった。
「ゆうくん、未知お姉さんに挨拶出来るかな?」
「うん」緊張しているのか蚊の鳴くような小さな声で返事をすると、ペコリと頭を下げて、ゆうくん、にちゃい。そう自己紹介してくれた。
ともだちにシェアしよう!