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穏やかで愛おしい日々
「やった‼あちょべる‼」
ピョンピョンと跳び跳ねて、喜びを爆発させる優真くん。一太も遥香も嬉しそうだった。
庭で早速鬼ごっこをはじめた子供達。
弾よけの男達がぐるりと子供達を取り囲んだ。まさに鉄壁の守り。
弾よけがいなくても安心して外遊びが出来る日がいつか来ればいいのにね。
太惺と心望に話し掛けながら窓から外を眺めていたら、シルバーのセダンが駐車場に入ってくるのが見えた。
七海さんってどんな人なんだろう。
橘さんや心さんに聞いたら、会ってからのお楽しみとしか答えてくれなかった。
千里さんみたくきっと素敵な大人の女性なんだろうな。
そんなことを思いながら、どんな人が車から下りてくるんだろうと、そわそわしながら待った。
彼より少し年上で、四十歳くらいかな?
車から下りてきたのは大柄の男性と、やせ形の男性が二人だけだった。
組の若い衆が緊張した面持ちで一列に並び腰を九の字に曲げて、二人を出迎えた。
「あっ!わしざきのおじちゃんだ!」
一太がすぐに気が付いて、遥香と優真くんの手を引っ張り二人の男性の許に駆け寄った。
優真くんに、わしざきのおじちゃんだよ。挨拶しようね。そう言ってるのかな?
優真くん、一太に言われた通りちゃんと頭を下げていた。
男性は前屈みになると、三人の頭を撫で撫でしてくれて、交代交代で高い高いをしてくれた。
キャキャと黄色い歓声をあげて、三人とも大騒ぎだ。
やせ形の男性が僕に気が付いて、笑顔で手を振ってくれた。
ごめんなさい。僕、何も覚えていないんだ。
あなたの顔も名前も思い出せない。
そんな自分が不甲斐なくて、申し訳なくて目を伏せて項垂れた。
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