726 / 3582
番外編 穏やかで愛おしい日々
周囲がなにやら騒々しい。
紗智じゃなくて残念だったな。
柚原黙れ!
鞠家さんの他にも誰かいるようだった。
みんな仲が良くて羨ましい。ぷぷと思わず吹き出してしまった。
『未知はなにも心配することはない。体をしっかり休めろ、いいな』
ぶっきらぼうな言い方だけど鞠家さんの優しさがスマホ越しでもハッキリと伝わってきて、胸がじんと熱くなった。
『未知なのか?』
『地竜、脇から入ってくるな。てか、人のスマホを勝手に………』
鞠家さんに代わりまた違う人が電話に出てくれた。
『我爱你 ウォ アイ ニー』
声を聞くなり彼の顔が険しくなった。
「何だ生きてたのか?」
『残念だったな。生憎俺は不死身だ。最愛の妻を残して死ぬわけないだろ』
「未知は俺の妻だ」
『俺がいたから未知が助かったんだろうが。感謝するのが当たり前だ』
「は?」
口喧嘩をはじめた二人。
それにしても地竜さんって誰なんだろう?
首を傾げていると、彼が憮然として電話を一方的に切ってしまった。
「地竜のことだけは思い出さなくていいからな」
もしかして焼きもちを妬いているのかな?
僕のことを妻って呼ぶ彼に。
「風呂に入ってくる。先に寝てていいぞ。どうした?風呂まだなのか?」
だって子供達を寝かし付けるのにてんやわんやで。すっかり忘れていたんだもの。
「そうか、なら一緒に入ろう」
一緒ってことはそのつまり………
そうだよね。夫婦だもの。子供だっているし。今さら恥ずかしがっている場合じゃないもの。
顔も耳朶もみっともないくらい真っ赤なんだろうな。
彼の顔をまともに見れなくて、慌てて顔を逸らした。
ともだちにシェアしよう!