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番外編 穏やかで愛おしい日々

「嫌ならいいぞ」 ううん、そんなんじゃないの。 ぶんぶんと首を横に振った。 「じゃあ、何だ?」 怪訝そうな声が返ってきた。 「恥ずかしいからに決まってるでしょ。ねぇマー」 濡れた髪をバスタオルで拭きながら、バスローブを羽織った那和さんが姿を現した。 「そうなのか」 「あのね………」 呆れたようにやれやれとため息をつく那和さん。 「オヤジは女心、いまいち分かってないの」 ベビーベットの隣にちょこんと座った。 「たいくんにここちゃんみてるよ。最近、夜泣きするでしょう。早くお風呂行ってきたら?」 「おぅ」 彼に体を支えてもらい立ち上がった。 「立ち眩みしないか?気持ち悪くないか?」 うん、大丈夫だよ。 遥琉さん心配し過ぎ。 「だって未知に何かあったら大変だろう」 彼の大きな手が右手をそっと包み込んでくれて。恋人繋ぎをしてくれた。 遥琉さん、那和さんが見てるから! これはこれで顔から火が出るくらい恥ずかしい。 「橘に見付からないようにね。おっかないから」 「言われなくたって分かってる。未知、なるべく足音を立てずに行くぞ。安定期に入るまで風呂に一緒に入るのは厳禁。したくなるからお触り厳禁だぞ。信じられるか」 小声で橘さんへの恨み節を口にする彼。 なんだか、橘さんが彼の保護者に見えてきた。 あれ? 前もどこかで同じことを思ったような……… 笑いを必死で堪えていたらそんなことをふと思い出した。

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