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番外編 穏やかで愛おしい日々

「たいくんとここちゃんが呼んでますよ。早く着替えて下さい」 替えの下着とパジャマを渡すと、橘さんは一旦廊下へと出た。 あれ? パジャマじゃない。 広げてみて気が付いた。 これってシャツだよね。しかも彼のかな?すっごく大きい・・・・ 「たまには褒美を与えないと暴走するからな」 「本当に悪趣味ですね」 橘さんと鷲崎さん、ごく普通に会話を交わしていた。 まさか本当にお風呂に入ってくるとは思わなかったから驚いたけど、でも不思議と嫌じゃなかった。 さっき見慣れるって……確かそう。 記憶を失くす前は、今みたく橘さんの世話になっていたのかな?そんなことを考えていたら、 「未知さん急いで下さい」 橘さんの声が聞こえてきて。用意してもらったシャツに慌てて着替えた。 「夜は冷えるからこの服を着たらどうだ?未知………」 紗智さんと那和さんに手伝ってもらいぐする子供達をあやしていたらもこもこの服を手にした彼が戻ってきた。 どういう訳か寝室に入るなり表情を強張らせ固まっていた。 気に障るようなこと何かしたかな? 訳が分からずきょとんとして、紗智さんと那和さんに助けを求めた。そしたら、 「マー、鈍感」 「本当」 ぷぷと二人に笑われてしまった。 「わ~し~ざ~き~!てめぇーーあとで覚えておけよ!」 くるっと後ろを振り向くと、背後に立っていた鷲崎さんに掴み掛かった。 「マンネリ防止だ。有り難く思え」 「は?マンネリ防止だと?これじゃ生殺し………」 口喧嘩をはじめた二人にびっくりしたのか、それとも鷲崎さんに気付いたのか、すっかり目を覚ました太惺がするりと僕の腕の中から後ろ向きで下に下りると、鷲崎さん目掛けてハイハイで向かっていった。 「太惺、何だお前も夜遊びしたいのか?さすが、遥琉の息子。だがな、生憎綺麗なお姉ちゃんはここにはいないぞ」 ハハハと豪快に笑いながら太惺を抱き上げてくれた。

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