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番外編 命をかけた彼の一途な想い
「地竜 はな、おそらくこれが死出の旅になるだろう。最後にどうしても未知に会いたいと、危険を省みず俺達を送り届けてくれたんだ」
「このまま日本に留まれば紫竜 や中国当局に命を狙われることもないのにな。上海にいる仲間を見殺しには出来ないんだと。本当に馬鹿だよ、アイツは………」
柚原さんと鞠家さんが悔しさを滲ませ上唇を噛み締めた。
「紫竜は、政府の高官に賄賂を送り、当局の取り締まりから逃れているんだ。犯罪を犯しても捕まることはない。公になる前にすべて闇に葬られている。地竜は、紫竜にとって目の上のたんこぶ、つまり邪魔でしかない」
紗智さんが心配そうに鞠家さんを見上げた。
「俺も那和も地竜に助けられた。恩を仇で返したくない」
「アイツは死神 だ。念願叶い、オヤジ公認の仲になったんだ。紫竜と決着をつけ、必ずここに戻ってくる。大丈夫だ」
鞠家さんがニコッと紗智さんに微笑み掛けると、指先で髪をそっと掬い上げた。
「紗智の髪は猫っ毛なんだ。ちゃんと手入れをしろって、いつも言ってるだろう?こんなにしゃくしゃになって」
「仕方ないでしょう。子供が四人もいるんだもの。ちょっと擽ったい。変なところを触らないで」
「擽っていないだろう。俺はただ紗智に甘えたいだけだ」
「もう、やだ。マーやみんな見てるのに。恥ずかしい」
顔を真っ赤にし照れまくる紗智さん。
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