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番外編 新たな敵、炎竜(イェンノン)

「大丈夫ですよ」 「うん、でも………」 チラチラと心配そうに窓から外の様子を見ていた紗智さんに橘さんが声を掛けた。 「寝ていないのでしょう。少し横になったらどうですか?」 「ダンナは大丈夫。千里も一緒だし」 那和さんが紗智さんの首に白いストールを巻いた。 「マー目のやり場に困る」 「え?」 何を言われているか分からずキョトンとしていた紗智さんに那和さんが小声で何かを耳打ちした。 すると顔を真っ赤にして、わたわたし始めた。 「アイツが噂の茂原か?」 「あぁ、そうだ」 遼成さんと並んで仁王立ちになり睨むように外を見据えていた彼に、柚原さんが声を掛けた。 「炎竜(イェンノン)の情人(イロ)とまことしやかに噂されている。炎竜は地竜が抜けたあと幹部になった男だ。伊澤が何度か茂原を問い詰めたが、頑なに口を割ろうとはしなかったらしい」 「そうか」 柚原さんの表情が引き締まった。 昨日の彼とはまるっきり別人の精悍な顔付きに、ドキッとした。 「オヤジに焼きもを妬かれても困るから」 目が合うなり苦笑されてしまった。 千里さんと鞠家さんとしばらく立ち話をしたのち、玉井さんと茂原さんが先に帰り、蜂谷さんだけが残った。そこで3人でまた何かを話し始めた。 「裁判がはじまる前に真珠の精神鑑定が行われることになったんだ。そこで心神耗弱により責任能力がないと認めれたら無罪放免になる。そしたらまた未知の命を付け狙うだろう」 戻ってきた蜂谷さんにそう説明された彼。烈火の如く怒りを露にした。

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