761 / 3636
番外編 新たな敵、炎竜(イェンノン)
悩んでもしょうがない。なるようにしかならないのよ。和江さんが僕を励ますため張り切って用意してくれた夕食は、品数の多い豪勢なものだった。
男性陣は千里さんや蜂谷さんを囲んで談笑しながら楽しそうにお酒を呑み交わしていた。
「いゃあ~~時代は変わったな。まさか女が組長になるとはな」
「いゃ~~ん、もう、そうちゃんたら、褒めすぎ‼」
程よくお酒が回り上機嫌の惣一郎さんの相手をする千里さん。さすがに手慣れてる。
本部の留守を預かる旦那様の笹原さんとのラブラブっぷりを龍成さんに暴露され、やぁ~~ん、恥ずかしいから言わないで‼と照れまくっていた。
酒が呑めない彼や橘さん、紗智さんや那和さんは和江さんの手料理に舌鼓を打ち、子供たちも口一杯にご飯を美味しそうに頬張っていた。
そんな贅沢ともいえる夕食を終え、子供たちを彼に頼み、先にお風呂に入った。
彼にどうしても着て欲しいと頼まれた浴衣に着替え、その上に袢纏を羽織った。
記憶も声もまだ戻らない。
でも不思議と不安や焦りはなかった。
だってこんなにも幸せだから。
好きな人に好かれることがこんなにも幸せなことだったなんて。大切な人達と過ごす何気ない時間がこんなにもいとおしいなんて。
ふと夜空を見上げれば、冴え渡る紺色の空にキラキラと星が輝いていた。
「体が冷えるぞ」
背後から彼の声が聞こえてきて。
振り向くと太惺を抱っこした彼が立っていた。自分の夫ということがいまだに信じられない。
やっぱり見とれるほど格好がいい。
ともだちにシェアしよう!