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番外編 彼からの告白

「橘さん、マーとオヤジのユェ シァ ラオ レン」 紗智さんがふとそんなことを口にした。 「中国語で月下老人、つまり仲人のことみたいよ」 意味が分からなくて首を傾げていたら千里さんが笑顔で教えてくれた。 「図体だけでかくて、中身はお子ちゃま。さみしがりで、構ってちゃんで、女好きで、焼き餅妬きで、その上嫉妬深い。こんなどうしようもない遥琉を、貴方は好きになってくれた。一太と二人で、遥琉をイクメンで家族想いの愛妻家に変えてくれた。お兄ちゃんはいつも貴方と一太に感謝しているわ。遥琉が愛しているのは貴方だけよ。だからもっと自信を持って」 「そうだよマー」 千里さんと紗智さんに励ましてもらい、それまで沈んでいた気持ちがスッと軽くなるのを感じた。 朝御飯のとき、何か言いたげな表情で千里さんをチラチラ見ていた彼。 幼稚園バスを惣一郎さんと見送ったのち、 「おぃ千里、さっきの言い方はないだろう」 声を荒げ戻ってきた。 「本当のことでしょう。なんならついでにカレンや咲のことも未知に教えるわよ」 「余計に話しが拗れるだけだ。止めてくれ頼むから」 千里さんは彼に何を言われても動じず、堂々としていた。 カレンさん?咲さん? 初めて聞く名前だった。誰なのかな? 首を傾げていたら、 「そもそも悪いのは私です」 橘さんがリビングに入ってきた。柚原さんも一緒だ。 「妊娠中は些細なことでイライラしたり、苛立ったり、涙もろくなったり、感情の浮き沈みが激しくなるのに……不安な気持ちにさせてしまいすみませんでした。親代わり失格ですね」 橘さんに頭を下げられ焦った。 (橘さんは悪くないよ) 慌ててブンブンと首を横に振った。

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