振り返ると彼が立っていたから驚いた。 「この三人は、昔、真沙哉の事務所に出入りしていた山口という男が可愛がっていたガキだ」 写真を蜂谷さんに返した。 真沙哉さんって確か彼のお兄さんで那和さんの旦那様だ。 名前が出るなり那和さんの表情が暗く沈んでいくのが分かった。 「お前の知り合いか？」 「いや違う。このガキのことは俺より柚原の方が詳しい。そうだろう柚原？」 いつの間にかドアに柚原さんが寄り掛かっていたから驚いた。 「あぁ、思い出すだけで腸が煮えくり返るがな」 はぁ～とひとつため息を吐くと、蜂谷さんと惣一郎さんに視線を向けた。 「もしかして………」 心当たりがあるのか惣一郎さんの顔から血の気がみるみる引いていった。 蜂谷さんもようやく思い出したみたいで顔が青ざめていった。 「未知、これ以上関わらない方がいい。紗智、那和を別の部屋に連れていってくれ」 彼に腕を掴まれ廊下に連れ出された。 何で？ぶんぶんと首を横に振り、手をバタつかせた。 『俺も卯月もきみが心配だからだ。他に理由はない』 地竜さんの声が聞こえてきたからびっくりした。 「地竜が未知と話しがしたいって、さっきから何度も電話を掛けてくるんだよ」 手に握り締めていたスマホを渡された。 「地竜、手短に頼む。余計なことは」 『喋るな、じゃないだろう卯月。いずれ分かることだ』 地竜さんに諭されて、 「あとでちゃんと話すよ」 『それでいい』 そのあと彼が気を遣ってくれて地竜さんと少しだけ二人きりにしてくれた。