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番外編 真の黒幕

「この泣き黒子のガキは、他の二人と共謀し女を浚う実行犯だった。心を連れ去ったのもコイツだ」 彼の広い胸に体を預けると、すやすやと眠る子供達の寝顔を眺めながら、11年前何があったのか話してくれた。 「被害にあったのは心だけじゃない。柚原の姉……七海のカミさんもだ。それにおそらく茂原もだ。監禁されて真沙哉やリーにレイプされ、その手下の野郎共にも輪姦(まわ)された。俺が心と七海のカミさんを助け出したとき、彼女は男達の子を妊娠していた。七海は仕事を辞め、献身的に彼女を支えようとしたが、これ以上生き恥を晒したくないと彼女は自ら命を断った」 ある程度覚悟はしていたつもりだったけれど………ギュッと上唇を噛み締めた。 ドサッと背後で音がして驚いて振り返ると、那和さんが崩れるようにへたり込んでいて、紗智さんに肩を支えられていた。 「今、心って…………それに七海って、鷲崎のカミさんだよね?」 「あぁ、そうだ」 「ボク、全然知らなかった」 呆然とし声が震えていた。 「俺も心も、柚原も七海も死ぬまで真沙哉とリーを赦すことは出来ない。だが、もう過ぎたことだ。そうじゃなかったら、真沙哉の愛人(アイレン)のお前を身内として受け入れる訳がない。そうだろう那和?」 那和さんは目に涙を溜め何度も頷いていた。 紗智さんも同じだった。 「俺が踏み込んだとき茂原の姿はすでになかった。代わりに、泣き黒子のガキの亡骸が転がっていた。茂原はすぐに見付かりサツに保護されたが、他の二人のガキの行方は全く掴めず、首謀者の真沙哉もリーも海外に逃亡し事件は迷宮入りした」

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