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番外編 護るべき大切なひと

「上総も、同じことを言っていた。やっぱり親子だな」 いててと腰を擦りつつお祖父ちゃんが戻ってきた。 「おぃ遥琉、お前の舎弟は何であんなに運転が荒いんだ?死ぬかと思ったぞ」 「すみません」 彼が軽く頭を下げた。 「でも逃げられる前にこうして玉井と会えたんだ。間に合って良かった」 お祖父ちゃんが玉井さんに歩み寄った。 「予想はしていたが、まさか本当に捨て身で黒竜(ヘイノン)のアジトに乗り込むとはな。なぁ、玉井、命はたった一つしかないんだぞ。お前が死んだら誰が弟の墓参りをするんだ?誰が弔うだ?」 お祖父ちゃんの問い掛けに、玉井さんの瞼から涙が零れ落ちた。 「播本、炎竜の正体は………」 意を決し重たい口を開いた。 「ーー永山一樹だろ?」 「やっぱり知っていたんだ」 「まぁな」 ニヤリと悪戯っぽく笑うお祖父ちゃん。 「永山も遥琉に負けないくらい妬きもち妬きだからな。茂原を護るためなら人を殺すことも躊躇わない男だ。玉井、これ以上永山に深入りするのは危険だ。蜂谷が玄関の前で待っている。自首して罪を償え」 「播本………さん、俺………」 玉井さんはぎゅっ、と上唇を噛み締めた。

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