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番外編 護るべき大切なひと
「一太くん、ハルちゃん駄目だよ。パパ達、大事なお話しをしているから」
紗智さんが慌てて追い掛けてきた。
「さ、紗智‼ええと・・・・う~ん」
姿を見るなり、ためらいの言葉を多用し、鞠家さんの視線が宙をさ迷った。
「どうしたの?」
怪訝そうに顔を覗きこまれ、
「いや、何でもない」
何とかして話題を変えようと躍起になった。
「あのね紗智」
「那和‼」
余計なことは言うなよ。絶対に言うなよ。目で脅し付けた。
「どうせすぐバレるのに」
やれやれとため息をつく那和さん。
「え?何?」
状況が全く飲み込めなくて。
紗智さんはきょとんとして不思議そうに首を傾げていた。
「ねぇ、遥琉さん」
ツンツンとシャツの裾を引っ張った。
「夫婦喧嘩は犬も食わないって言うだろ?ほっとけばいい」
「夫婦喧嘩犬も食わない?それ何?美味しいの?」
那和さんが興味津々の様子で彼に聞き返した。
「食べるものじゃない。古くからよく言われていることわざだ。意味は、夫婦の間で起こるけんかは、問題にならないような、つまらないことが原因で起こるものだ。すぐに仲直りするから、他人が心配しても、ばからしいから放っておくほうが いいということだ」
「へぇ~~日本語、難しい。ねぇオヤジ、ボクも彼 と出来るかな?その……なんだっけ?」
「夫婦喧嘩だろ?」
「そうそれ!」
「出所したら幾らでもすればいい」
「うん、する」
那和さんが忘れないうちに書き留めておかないと、そう言って、メモにカタカナでフウフゲンカ、イヌモクワナイと早速書いていた。
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