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番外編 護るべき大切なひと

「だが、やたらと鼻がきく九鬼創業の幹部によってすぐにサツだとバレて、タマは速効性のある媚薬とビターチョコを盛られ、輪姦(まわ)される寸前、俺と伊澤でタマを救い出した。薬が完全に抜けるまで俺はタマを匿い、寝食を共にした」 そこでチラッと紗智さんに目を遣ると、 「本人はそのときの記憶がないが、薬でラリっていたタマに何度か押し倒されてセックス紛いのことをしたのは事実だ。薬物中毒の禁断症状で半狂乱になり薬を欲しがって暴れるタマをほんの一瞬でも救えるならと・・・・・ごめんな、紗智。拒む事も出来たのにな・・・・・優柔不断で情けない男で・・・・愛想が尽きただろう」 紗智さんは首を横に振りながら、鞠家さんの手に両手をそっと重ねた。 「その優しいところに、俺は、高行さんが好きになったんだよ。何があっても別れないよ」 お互いの過去に向き合うことですっかり仲直りしたみたいだった。 「まさに雨降って地固まるだな。良かったな」 お祖父ちゃんもほっとして胸を撫で下ろしていた。 でも………… 「何かあればタマ、タマ、タマ。喧嘩してもすぐ仲直りして。はたから見たら完全にバカップルだったんだ。俺はてっきり、二人が付き合っているとばかり思い込んでいた」 「は?」 やっと鎮火した火に油を注いだのは誰も予想していなかった蜂谷さんだった。

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