816 / 3594

番外編 護るべき大切なひと

「マー」名前を呼ばれて顔をあげると那和さんと目が合った。 「紗智も眠っちゃったみたいだね。旦那、茨木さんにこってり………じゃないな、みっちり?よく分かんないけど怒られていたよ」 「もしかして、遥琉さんも?」 「うん。でも、少しね」 苦笑いしながら隣に座り込んでくると、甘えるように頬を肩に擦り寄せてきた。 大好きな人が………真沙哉さんがそばにいなくて寂しいんだと思う。 僕や、紗智さんは好きな人がそばにいてくれるから、今まで寂しいなんてこれっぽっちも思ったことがなかったもの。 「ごめんね」 「何でマーが謝るの?」 「だって……」 言葉を濁すと、 「彼がいなくても、ボクには優しくしてくれるマーやオヤジがいて、何でも話せる紗智がいて、構ってくれる子供達がいて、オヤジより頼りになる橘さんがいる。だから、寂しいって思ったことないよ」 「那和さん」 「やぁだな~~もう。マーには暗い顔は似合わない。だから、笑って。ボクも紗智もマーにはいつも笑っていてほしい」 「ありがとう」 「マー、大好き」那和さんが嬉しそうにムギュー、と抱き付いてきた。 そこは俺の指定席だ! 離れろ! ドアから彼の声が聞こえてきたけど、那和さんは聞こえないフリをしていた。

ともだちにシェアしよう!