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番外編 護るべき大切なひと
「マー」名前を呼ばれて顔をあげると那和さんと目が合った。
「紗智も眠っちゃったみたいだね。旦那、茨木さんにこってり………じゃないな、みっちり?よく分かんないけど怒られていたよ」
「もしかして、遥琉さんも?」
「うん。でも、少しね」
苦笑いしながら隣に座り込んでくると、甘えるように頬を肩に擦り寄せてきた。
大好きな人が………真沙哉さんがそばにいなくて寂しいんだと思う。
僕や、紗智さんは好きな人がそばにいてくれるから、今まで寂しいなんてこれっぽっちも思ったことがなかったもの。
「ごめんね」
「何でマーが謝るの?」
「だって……」
言葉を濁すと、
「彼がいなくても、ボクには優しくしてくれるマーやオヤジがいて、何でも話せる紗智がいて、構ってくれる子供達がいて、オヤジより頼りになる橘さんがいる。だから、寂しいって思ったことないよ」
「那和さん」
「やぁだな~~もう。マーには暗い顔は似合わない。だから、笑って。ボクも紗智もマーにはいつも笑っていてほしい」
「ありがとう」
「マー、大好き」那和さんが嬉しそうにムギュー、と抱き付いてきた。
そこは俺の指定席だ!
離れろ!
ドアから彼の声が聞こえてきたけど、那和さんは聞こえないフリをしていた。
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